注意!
この話は本編7章〜8章(ZEBELvol.6〜avarus10月号)の間を妄想したネタとなってます。
バリーとレイフロの話となっております。なのでグロ注意です。
大丈夫な方のみご覧下さい。
悪い夢の後の目覚めはまるで夢の続きの中に居るような錯覚に陥る。
それが夢か現か、それを見極めるよりも早く覚めてしまえと思う。
特に今のような最悪な時は。
「アディー」
どこか愛しさすらこめたような声色で呼ばれたところで、一体どんな返事を期待しているのだろう。
何か言ってやろうとしたが息がつまる。当り前だ普通の人間なら死んでいなければおかしい状態なんだ。
下半身に感覚は無い。有ったら多分痛みどころの騒ぎじゃないだろう。
そこに身体の一部であった部品は何も無く、シーツに赤い染みが広がるだけだった。
腹だって感覚が曖昧だ。腸がだらりと出ているような気がするがそもそもそれは知覚するようなものでもない。
あるのはぼんやりとした違和感と虚脱感。
頭がボーッとしているのは血が足りないからだろうか。
こんだけぶちまけやがって、血は貴重なものだとかほざいておいてこれは無駄なことじゃないってか?
血…あぁ、そういえばチェリーは…と考えかけて止めた。
きっと俺が考えれば、それにこいつが気付けば、また同じことを繰り返す。
先ほどのことだと言うのにそれを思い出せるのは一瞬一瞬で、なのに目に焼きついたコマ数秒の光景はこのまま心臓を抉られるよりも辛いもので。
よりによってあいつの顔で…あぁ本当に胸糞が悪い。
気取られないように、少しでも気を紛らわそうと身体に意識をうつす。
無事なのは腹…いや、鳩尾から上か。腕は宣言通りにもがれた。こいつの言うような興奮なんて微塵もなかった。
ただ苦痛だけで後には何も無い。肉体を壊される恐怖など当に消えた。
「アディー、聞こえているのかい?」
「…な、んだよ」
息すらも困難な身体で無理矢理返事をすれば血が吐き出された。
内臓だけでなく肺あたりもどうにかなってるらしい。
詳しくはわからないが血を吐くような事態にはなっているのだろう、息がし辛くて仕方ない。
俺が痛みやらでもがき苦しむのがよほど見たいということかわざわざ声までかけて…執拗というか、念入というか…とにかく徹底したその性格に吐き気がする。
不快感に眉を寄せた俺に目の前の少年のような顔をした者はまるで天使の様に微笑んだ。
「よかった、君が眠ってしまっては面白くないからね」
眠るんじゃなくて出血多量による気絶もしくは失神だろうが…と言えるはずもない。喋るのも面倒だ。
俺の不機嫌そうな顔を見てバリーは不思議そうに小首を傾げた。
こういった仕草はやたら子供くさくて吐き気がする。
「何か気に障ったみたいだね」
何か、どころの騒ぎじゃないだろう。
隅から隅まで全部しかも気に障るなんてものじゃない。
それをこいつは理解しない、いや出来ないのだろうか。
それとも理解した上での行動か…あぁそう思うといかにもこいつらしい。
人の心の隙に、傷に、痛みにつけこんでくるところはまさにインキュバスだ。
まぁそこに的確に刃を突き立てるのはこいつの性格なのかもしれないが。なんて性格だ。
そんなことを考えていると腹部に触れられた感触がした、ような気がする。
知覚出来ないからあくまでそんな気がする、という程度だ。仕方なく視線をそちらに向ける。
バリーが俺の腹を…いや、腹の中をいじっている。
そして腹から掴んだ血やら何やらでぐちゅと音をさせるそれに微笑みを浮かべたまま見せ付けるようにそっと口付けた。
「…君の内臓は、いい色をしているね。奇麗だよアディー」
血で赤く唇を染めながら確かめさせるようにそれを見せる。
それ、とは俺自身の内臓とそれに口付けた血化粧との両方だ。
悪趣味な思考に俺は何か言いかけてまた咳き込む。
血を吐く姿をじっと見つめるその口元はやはり微笑んでいて。
あぁ、本当に悪趣味な…夢であるにしろ現実であるにしろ嫌な光景。
今はただこの最悪な時間が早く過ぎればいいとそればかりを思った。