その日のティーダはどこか変だった。
やけにそわそわしてろくに会話もしない。
返事はするがどこか上の空というか、とにかくそんな感じで時々に悩むようなそんな顔すらする。
そんなこの子に何ができるというわけでもなく俺はただ、見守ることしかできないのだが。何か居心地が悪くて、

「もう寝るぞ」

と俺は早々に部屋に戻った。

この子がいつでも俺が泊まれるようにと用意した部屋。
多分、以前はジェクトの部屋だったんじゃないかと思う。
あいつがいたという証拠はもう何もないだろうが。
ベッドに横になり、天井を見つめる。
一体あの子はどうしたのだろう。
気になる奴でも出来たのだろうか。
それなら俺は邪魔するわけにはいかないだろう。
多分、そんなことはないだろうが。
普段あの子は場所も時間も考えずに俺を好きだと連呼する。そんなあの子が…、と考えてやめた。
これではまるで浮気しているのかと疑う恋人のようで、馬鹿らしいような気がした。


ドアが開く音がした。
顔を上げるとあの子が立っていた。

「ティーダ?」
「…ね、そっちいっていい?」

無理して笑ったような顔に違和感を感じながらも俺は断れなかった。
俺は体を起こし、あの子はベッドに座った。

「ごめんね、こんな時間に」

そう言いつつもやはりどこか暗い。

「…何か、あったのか?」

俺が聞くと首を横に振った。

「ん…ってゆーか…今から」

そういってティーダは俺を押し倒した。





「なっ…!?」

驚いている隙に、すぐに上に乗って起き上がれないようにされた。

「アーロン…」
「何を…ふざけている!!早く退け!」
「ふざけてなんかない」

さっきまでと違う、はっきりした声だった。

「俺、ずっと考えてたんだ…アーロンと、したくて」

でも、とティーダは続けた。

「こんな方法しか思いつかなかった。俺不器用だから」

そういいながら頬を撫でる。
優しい手の動きに正直どうしていいかわからない。

「…やめろ。こんなこと…するな」

かろうじて、そう言えた。

「こんなことって何?アーロンにっとってはこんなことでも俺、本気だよ」

俺の上に乗ったまま、真剣な顔で俺を見る。
眉を寄せて切なげな顔をして俺に言う。

「アーロンが大好きなんだ。大好きで大好きで…死にそうなくらい」

どこか泣きそうな時の顔に似ている気がした。

「ティーダ」
「もう俺子供じゃない。アーロン…好きなんだ」

そういって胸元に唇を落とした。
瞬間、ぞくり、と嫌な感じがした。
否、嫌な予感に近い、何か。

「…っやめろ」
「何で?」
「…やめろ」
「嫌だ。アーロン嫌なら理由言って」


「他に、好きな奴いるの?」
「違う」
「俺が子供だから?」
「違う」
「俺のこと嫌い?」
「違う」
「じゃあ、何で?」

自分でも理由がわからない。
抱かれることに対しての拒否感なのか、それとも他の何かか。


「…親父に、俺のこと頼まれたから?」



それも、ひとつだと思う。
だが何か違う。
何故。


「…大好きなんだよ…?」


泣きそうな顔。思わず手を伸ばす。
背に回して優しく撫でる。


あぁそうか。
俺はこの子を愛している。
だから拒む。

いつかくる別れの時、この子の泣き顔を俺は見たくないから。


それからは急だった。
無数に唇を落とされ、気が付けばカラダを重ねていた。
あの子の熱い鼓動が切ないほど全身を痺れさせた。

「…アーロン、大好き…」
「っ…ティ…ダ…」
「大好き。何よりも、誰よりも…っ」

もう手遅れだった。
愛されてしまった。そして愛してしまった。
この子を何よりも。
放したくない。
永遠を共に生きたい…俺はもう、死んでいるが、その限られた時間の間だけでもこの子を無くしたくない。

愛している
愛している
愛している……







顔に当たる光に目を開けた。
顔を上げると昨晩と同じようにティーダがベッドに座っていた。
俺が起きたのにすぐ気付いたようで、いつものように笑った。

「アーロン起きた?」
「…ああ」

体がだるかった。酷く疲れているような…事実疲れていたが。

「へへっ…なんか照れくさいな」

若いからかティーダは元気だった。
ふと、窓からの日差しがやけに明るいのに気付いた。

「…ティーダ」
「何?」
「今、何時だ」
「お昼。ウキウキウォッチングな時間だよ」

平然とティーダは答えた。
昼、ということは何時間寝たのか計算しようとして止めた。

「…何故起こさなかった」
「だってアーロン可愛い顔して寝てるんだもん。起こすのもったいなくて」
「食事は」
「一食ぐらい抜いても平気。俺若いから。じゃあ俺がご飯作るね」
「…お前が?」
「今すっごく気分いいから」

そういって部屋を出ようとして止まる。

「…あ、そうだ」

といいながら俺のところに戻ってくる。

「何だ」
「大好き」

そういって頬にキスをして部屋を出ていった。




キスをされた部分に触れて俺はまた思った。

もう手遅れだ
こんなにも愛している