熱さと胸の疼きに踊らされるばかりの一時が終わって二人で布団に包まる。
この時間が俺は好きだった。
とても近くにいて、離れたくなくて、あぁ今幸せなんだなってぬくもりがそこにある。
ふと目が合うと政宗が優しく笑う。
「I love you」
その意味は嫌というほど教えられたからわかる。
でもそれより政宗の愛しさを込めた声がやけに胸を熱くさせる。
この声には本当に弱い。
好きだけど何だか嬉しさより恥ずかしさが勝ってしまう。
「…そういうのはわかるように言えって」
「ちゃんと意味は理解ってるだろうが。何度教えたと思ってる?」
誤魔化すように言えば笑いながら返される。
こういうところは何だか子供っぽい。
そういう俺も子供だと言われる性分だから引き下がれずについつい応戦する。
「そりゃ何回も言われれば覚えるって」
我ながらいい切り替えしだと思った。
だが大して効いていないらしく政宗はふぅん、と呟いた後いいことを思いついたと言わんばかりににやりと笑った。
「じゃあお前から言ってみろよ」
「な、何でだよ!」
「よく考えてみればお前からは少ないだろ?」
思い返してみれば確かにそうだ。
言われて返すことはたまにはあるけど基本的に俺は言っても『好き』どまりだ。
俺からしてみれば政宗が言いすぎ、とも返せたのだがそれが嫌ではないから困る。
結局俺はごにょごにょと言葉を濁すことしか出来ない。
「だからって…」
「いいだろ?なぁ」
「う…」
改めて熱を込めた声で言われると俺は恥ずかしくて目が合わせられなくなる。
一瞬言おうかと口を開きかけるが…無理だった。
「す、好きってのじゃ駄目なのか?」
「愛してるぐらい言えないってのか?」
ようやく見つけた反論のきっかけもあっさりとつぶされた。
だけど、でも、と何か言葉を続けようとすると政宗が見せ付けるようにため息をついた。
「…それとも俺のこと愛してない、か」
「そんなことはないっ!政宗のことはす、好き…だけど」
売り言葉に買い言葉、とはちょっと違うかもしれないがそんな風に思われたくはなくて言葉が出ててしまう。
それでも目当ての言葉を引き出せなかったようでそれでも政宗は続ける。
「ならいいじゃねぇか。言ってみろよ」
「心の準備ってのがいるんだよ!」
俺がムキになって返し布団にもぐりこんだところで政宗も諦めたのかその夜の会話は終わった。
そして今、俺はそのことで悩んでいる。
夢吉に話を聞いてもらいながらああでもないこうでもないと悩む。
「別に嫌いってわけじゃないのはわかってるんだけどさ…」
「きぃ」
「恥ずかしいのも確かにそうなんだけど、何だろう…怖い、のかな俺」
ぽつりと呟いてみれば確かにそうだと思った。
失った恐怖から、臆病になったのは紛れもない事実。
そのことに気づいたのは最近で、気づかせてくれたのはあいつで。
今こうして恋をしているのだってきっと政宗でなければ駄目だったのだともわかっている。
それぐらい惹かれたことも何もかも頭の中では理解できている、その筈なのに。
失う恐怖ばかりが身に焼き付いていて、離れなくて…一歩が踏み出せない。
好きだと愛してると言われたらあんなに嬉しいのにそれを返すことも出来ないなんて。
このままだといつか嫌われてしまうんじゃないかと思うと泣きそうになる。
それなのに言えない自分がもどかしくて歯がゆくて、嫌だ。
「…き、きっ」
夢吉がぽんぽんと頬を叩く。
元気付けられてるんだなと思うと何だか自分のしてることが情けなく感じた。
「夢吉…そうだよな、俺らしくないよなこういうの」
勢いをつけないと駄目なんだきっと。
愛してると伝えることも出来ないようじゃ俺はこの先も恋なんて出来ない。
そう結論付けた俺は立ち上がり走り出した。
小十郎さんや政宗の部下達の間をくぐりぬけ政宗の下へ走る。
もうすぐ政宗の部屋だと思うと胸の鼓動が早くなる。
手が震えている気がする。
これは武者震いだと自分に言い聞かせて拳を握る。
それでも消えきらない恐怖に負けそうになる。
いやだ、負けたくない。
「政宗ー!」
「いきなりでかい声で何なんだお前!」
咄嗟に政宗を呼ぶと騒ぎを聞きつけたのか丁度部屋から出てきたところだった。
勢い余ってぶつかりそうになるのをぎりぎりで止まる。
一体何事かと政宗が俺を機嫌の悪そうな目で見ている。
目を反らしたくなる気持ちを抑えこむと今度は目が反らせなくなる。
「あ…」
走ってきただけではない頭に上る熱に頭の中がぐるぐる回る。
心臓は押しつぶされそうなくらい冷たいのに顔が頭が熱い。
このままどうにかなってしまうんじゃないか。
それでも言わないと、という気持ちに押され叫ぶように言う。
「あ…」
「あいらぶゆー!」
言えた。
呆然とする政宗に何か言われるのが怖くて俺はきびすを返して来た時以上の勢いで部屋から飛び出した。
「おい!!」
後ろから呼び止める声がするが止まる余裕なんてない。
ふと頬に触れると信じられないくらい熱い。
「い、言えたんだ!これで一歩進歩だよな!」
胸のドキドキはまだ止まらないがずっと付きまとっていた冷たいものは消えていた。
これで俺は恋ができる。
政宗がくれたたくさんの暖かさを俺から政宗にあげれるんだ。
そしたら政宗は嬉しいだろうか喜んでくれるだろうか。
自分にそう言い聞かせて走った。
「政宗様今のは一体…」
「…まぁ、少しは進歩したってことか」