注意!
エロ描写があります。未成年の方、苦手な方はブラウザで戻って下さい。




















たまには自分からアトルの顔でも見に行くかと俺が吉原に向かおうと思ったのはただの気紛れだった。
だから吉原の入り口前で男にしては幾分高い見知った声におい、と呼び止められたのもおそらくは偶然のはずだった。
振り返ると若い絵師がにやにやしながらそこに立っていた。

「…なんだ狂斎か」
「随分とご挨拶だね。亜馬ならいないよ」
「何でお前がそんなこと」
「俺がそう言われたからさ」

つまりは門前払いされたわけなのだろう。
いい気味だと思いながらもアトルがそうした以上自分が会うわけにも行かない。
声をかけてきた以上狂斎のことだからアトル目当てで付きまとってくるに決まっている。
折角機転を利かして(もしかしたら花魁の入れ知恵なのかもしれないが)わざわざ遠ざけたものを俺がぶち壊してしまうのは偲ばれる。
まぁ急ぎの用があったわけでもないからいいかと長屋にでも戻ろうとしたところを再び呼び止められた。

「折角だから酒でも飲まないか?」
「俺が?お前と?」
「もちろん俺持ちだ。悪い話じゃないだろ?」






断る理由も特になく、そうして案内されたのは吉原からいくらか離れた屋敷の小さな部屋だった。
薄暗い、どことなく絵具の匂いがする。

「…何だここは」
「絵を描くために借りてる部屋のひとつさ。
気が向いたときに気の向いたところで描けるようにいくらか借りてるんだよ」
「それはそれは贅沢なこって。それよりお前ここで飲むのか?」
「いい酒をここに置いたままだったのを思い出してさ。ほら、こいつだ」

そう言って酒の入った瓶を取り出し座る。
俺も習って空いているところに座ると杯を前に置かれ酒を注がれた。
そう簡単に口をつけるのも躊躇われてその酒に何か混じってはいないかと見るが一見ではよくわからない。
水面からふと視線を上げると狂斎が目の前で手に持った杯に注いだ酒を飲み干したところだった。
ふぅ、と美味そうに息をつくのを見てとりあえずただの酒のようなので仕方なく口をつける。

「…どうだ?」
「まぁ、悪くはない」

異界のものしか口に合わない体だが酒の旨みはそれとなくわかる。
たしかに上等の酒だった。こんな餓鬼にはもったいないくらいの。
そんなことを思っていると狂斎が俺の顔をじっと見つめていた。

「やっぱり」
「…何がだ」
「あんた、やっぱり普通の奴らとは何か違うな。変な色がある」

そう言って立ち上がらずに距離を詰める。
意味を考えていたせいで逃げが遅れ杯を持っていない手を掴まれた。

「離せ…何なんだいきなり。若いのにそういう趣味か?」
「まさか。男なんてまっぴらごめんだね。俺はただ珍しいものが好きなだけさ」
「…何、す」

振り払おうとするが体が上手く動かない。
手が痺れたように動かなくて杯を取り落とし、零れた酒が床を濡らした。
呆然とそれを目で追う動きすら緩慢で俺はようやくそこで何かされたことに気がついた。

「体、動かないだろ?」
「何…を、仕組み、やがった…」

動かない体の代わりの言葉での抵抗も痺れた体では弱々しく、狂斎はそれを満足げ見てに自分の持っていた杯を俺に見せる。
同じように酒を飲んでいたはずなのに狂斎の杯は乾いている。つまり狂斎は酒を飲んでいない。
怪しまれぬよう酒を出してからすぐに俺の杯に注ぎ自分もそれを飲んだように見せたのを思うとあらかじめ計画しておいて誘ったということなのだろう。

「…酒に薬、か。随分と…用意周到だな」
「ご名答。安心しな、大した量じゃないから痺れはすぐに消える」

だからその間に、と言いながら俺の手を後ろにまわし紐で縛った。
簡単に解けないことを確認すると今度は着物の帯を剥ぎ取り合わせを豪快に開く。
何をするかと思えばそのまま肌をまじまじと検分するかのように眺めている。
男なんてごめんだと言った割にその目にはどこか好奇な色が混ざっている気がする。

「何なんだろうこの色は…こんな爺のくせして」
「誰が…っっ」
「肌だって歳の割には綺麗なもんだし」
「ん…っやめ、ろ…ぁっ」

つうと狂斎の指が試し書きするかのように胸を通る。
それだけでびくりと体が震えたのは酒のせいだけでないことぐらい自分でよくわかっている。
そもそも自分でも嫌になるぐらいに刺激に弱すぎるのだ、この体は。
こんな子供にいいように嵌められたというだけで不愉快だというのに体はそれすらも刺激としてしまう。
苦痛ばかり受けてきた体からすれば至極当然な防衛行動なのかもしれないが、そんな体を俺は何度恨んだことだろうか。
それでもそうなってしまった体を止める術までは俺は知らなくて、ただされるがまま声を上げないように必死で抑えることしか出来なかった。

「それに…感度もいい、と」

ぽつりと確認するようにそう呟くと狂斎は一本の筆を取り出した。
赤の絵具をたっぷりと含ませてその先を肌へと寄せる。

「な、何する気だ!」
「気にすんなよ、絵を描くだけさ」

まず胸元を縦に横断するように一本の線を引いた。
ひんやりとした絵具と柔らかい筆の感触に背筋がぞくりとするような悪寒と、真逆に体を熱くさせる微かなる快感が混ざり合いながら全身を走った。

「はっ…ぁ!」
「思ったとおりだ。筆のすべりがいい。
さすがに鳥肌がたってるな…あぁ、でもこっちはいいみたいだ」

そう言って刺激を貪欲に快感に変え軽く突出してきた胸の飾りに筆を這わせる。
胸も弱いところだと俺に告げたのは誰だっただろうか、筆の刺激に対しその粒は肌に比べて過敏に反応してしまい今まで堪えていた声がどうしても抑えられないものになる。

「あぁ…っ!やめ、触わるな…っ」
「もっといい色にしてやるよ」

そういって先を筆先でつつきまわりにくるりと円を描いた。
柔らかくもどこか鋭い筆の先は指とは異なる刺激を与え、予想だに出来ないそれに思わず高い声が出てしまう。
手で塞ぐことも出来ずまだ痺れのある体を見下ろすと円を描いたその軌道のままに赤い色がついている。
いい色に、とはこういう意味だったのか。
あまりの趣味の悪さに狂斎を睨みつけるとそれがどうしたと言わんばかりの顔でため息をつかれた。

「そんなに嫌がるなよ。別に危害を加える気じゃないんだし」

どこがだと声を荒げて言ってやりたかった。
こんなわけのわからないことされるぐらいなら単純に犯された方が何倍もましだ。
薬のせいかそれとも別のもののせいかそれは言葉には出来なかったがそんな俺を見て狂斎が呟く。

「…あんた見てるとさ、描いてみたくなるんだよ」

何を、と告げようとして狂斎の真剣な瞳に言葉に詰まる。
だがそれはほんの一瞬で狂斎はすぐにいつもの本心の見えない顔に戻った。
目ざとく下帯の中で高ぶっているものを見つけ邪魔なものを取り払う。
窮屈だったそこから解放された自身は露を零しながら震えていた。

「ふふ、何だ好いんじゃないか」
「あ…っ」
「凄いな…こんなことでこんなになるんだ」

そう言いながら確かめるように筆で触れる。
手で触るならともかく筆だ。湿った感触がどちらのともわからず柔らかい筆先での刺激がもどかしくて自然と腰が筆に押し付けようとするように揺れた。

「どうしたんだよそんなに腰振って。誘ってるつもりかい?」

鼻で笑って狂斎は裏の筋を筆で撫で上げる。
人の手であったならばもっと激しくよがり狂っていただろう。
だがそれはやはり決定的な刺激ではなく荒く息を吐きながら自身がまたとぷりと露を零すのがわかる。
もどかしさに頭がおかしくなりそうだった。
もっと直接的な、激しい刺激が欲しい。早く吐き出してしまいたい。頭の中がそれでいっぱいになる。

「どっちが好き者なんだか」
「ぁっ…れ、て…っ」
「何?」
「た、頼…触れ、て…」
「何言ってんだ触れてやってるじゃないか」

そう言って今度は露を吐き出す口を筆先で嬲る。
激しいのにやはりそれはその先へは一歩届かず、絵具が露と混ざる様を見ることすら出来ない浅ましい劣情に知らず涙が溢れた。
情欲に弱い体を怨みながらそれでも楽になりたい一心で滲む視界に狂斎を捉えながら恥も外聞もなく俺は懇願した。

「違っ…ぁっ、はっ、はやくっ…ぃかせ…て、くれ…っ」
「…仕方ないなぁ。いい大人の癖に堪え性のない」

呆れたようにそう言って狂斎が筆を置きめんどくさそうに指を伸ばした。
大人とは違う少し小さな、絵を描く綺麗な手で露で濡れたものを乱暴に握り上下に擦った。
先ほどまでと違うその急な刺激に二、三度の往復で俺は呆気なく果てた。
その飛沫は胸の辺りまで濡らし赤い線の上に散った。
肩で息をしながら余韻にぐったりと体を横たえていると狂斎が改めて筆を走らせた。
達したばかりの体は敏感で体が大きく弾んだ。

「あぁ…っっ!!な、何す…」
「言っただろ?俺は絵を書きたいって」

そう言って抵抗出来ないことをいいことに胸から腹からくまなく筆を走らせた。
まさにそれは絵を描いているというべき動きで、それもちゃんとわかっている。
だが敏感になっている体は既にそれを違うものと受け止めていて収まったはずの熱をすぐに昂ぶらせていく。
狂斎はそれに見向きもしないで絵を描くことに真剣になっている。
俺が涙を流しながら再びあられもなく悶えたところで眼中にないらしい。
普段も絵を描くときの集中力はたいしたものなのだろう、だが今こんな形で知りたくなかった知りたくもなかった。
淫らな叫びを上げながら俺はただそれが終わる時を待った。






「さて、出来上がり」

ようやく狂斎が筆を置いたのを見て俺はほっと息をついた。
だが涙で潤んだ目でその体に描かれたものを見て今度は息を呑むことになる。
仄かに赤く染まった肌にそれ以上の赤で描かれたのは一匹の竜に似た生き物だった。
それはどこか自分、いや正確には自分とは違うもの…駁によく似ていた。
狂斎は仕上がりに満足したのかにやりと笑ってそれを見ている。
俺が駁であることは狂斎は知らないはずではある。
だがわざわざこんな手まで使ったあたり何かを感じているということなのだろうか。

「まさ、か…このために?」
「だから絵が描きたかったって言っただろ。
あーあでもこのあたり、絵具と混ざってぐしゃぐしゃだね」

そういって俺が放ったものと絵具を指の先でぐるぐるとかきまぜる。
どろりとしたものが腹の上をゆっくりと垂れてその感触にまた背筋が震える。
驚きで一瞬遠くなった欲がまたぶり返してくる。本当に…難儀な体だ。

「ふ、あぁっ…」
「ははっ、何だ結構な歳のくせに随分と盛んだね?」
「うる、せぇ…っ早く腕、解け…っ」
「まだだよ。こっちを済ませないと全体の仕上がりが見れないだろ」
「なっ…あぁっ!?」

今度は丁寧に欲を煽るための動きで俺の熱を高めていく。
一度放ったとは言え敏感な体を散々筆で嬲られた後だ。抵抗など端から出来なかった。

「ほら出しちまいたいんだろ?」
「ひぁっ…は、なせ…ぁっ!」

狂斎に促されるまま俺は二度目の精を放った。
こんな短い期間で吐き出したのは稀で、消耗が激しい俺は自分で動くことも出来ずに横たわる。

「呆気ないもんだね。そんな好かった?」
「るせぇ…もういいだろ、解け」
「どうせすぐに動けやしないだろ?それまでこの絵を堪能させてもらうよ」
「解け!」
「うるさいなぁ後ろにこれ突っ込まれたいか?」

そういって筆を目の前に翳す。
毛の部分ならまだしも柄の部分は固く長い。
ましてや容赦などしようもないこいつのことだそんなことになったらきっと…そう思うと俺は押し黙るしかなかった。






ようやく解放されたのは日が暮れ始めた頃だった。
ご丁寧に湯まで沸かして体を清めさせたのはまぁ気の聞いていると言えなくもない。
ただその様子をじーっと妙な色とやらの出所を観察されるように眺められた。
腹いせに絵具で赤く染まった手ぬぐいを投げつけてやりながら戸口に向かうと平然とした声が後ろから聞こえた。

「今度は後ろの方にまでちゃんと描いてやるよ。そうだな…菊なんかどうだ、大輪の」
「こ、の…糞餓鬼!!」