注意!
動物化。正直原型留めてないぐらいキャラ崩れてます。
そして軽いエロ描写もあります。未成年の方、苦手な方はブラウザで戻って下さい。

「anxiously」…心配な, 不安な,熱望して




















あるところにユキ、と云う名の猫がいました。
本当の名前はユキアツと言うのですがユキさんユキさんと飼い主が呼ぶので自分はユキなのだと思っている猫でした。
小さい頃の手術のせいで頭の中が子供並だったので仕方がないのかもしれません。
ユキは飼い主のことが大好きでした。
飼い主は名を雲七と言ってそれ以上のことはユキは知りません、それで充分だったからです。
ユキとって雲七に餌を貰って、甘えて、遊んでもらって、一緒に寝て、それだけで幸せでした。





ある日雲七はいなくなりました。
雲七は「必ず戻ってくるから」と言っていなくなりました。
だからユキは待っていました。雲七は嘘をつかないと思っていたからです。
やがてユキは野良猫になりました。家の近くで待っているのも限界があって、仕方なく野良になってあっちこっちをふらふらする日々でした。
野良の生活は寒いし辛いしでもユキは一生懸命生きました。
いつかいつか雲七が帰って来るのだと、それだけのために。





ある日ユキは人間に捕まりました。
その人間たちは野良猫を保護する人たちなんだそうで、ユキもそこで暮らすことになりました。
あそこで待ってなければいけないのに、とユキは思いましたがおいしいご飯とあったかい寝床に釣られてきっと雲七なら自分がいる場所ぐらい分かってくれるだろうと思うことにしました。
猫の部屋は猫用の玄関もあってそこから庭にも出れるようになっていて退屈はしませんでした。
時折り外に出て雲七の匂いが流れてこないかとぼんやりするのがユキの日課になりました。





ある日新しい猫がやってきました。名前はアビ。
アビは生粋の野良で体が大きく、手術もしてないので頭の中は大人でした。
ユキは頭はともかく年齢は自分が上なのでアビに色々と教えてやろうと思いました。
自分より小さいユキに始めアビはどう接していいかわかりませんでしたがすぐに慣れました。
もともと人懐っこいユキは猫に対してもそうで、そしてアビはそんな風に懐かれたことが始めてでそれが嬉しかったのかもしれません。
2匹は急速に仲良くなって、よくくっついて眠っているところを人間が微笑ましく見守っていました。





ある日アビはユキが毎日外でぼんやりしている理由を来ました。
そして飼い主を待っているのだと聞いてきっと来ないだろうと思いました。
昔、アビは人間の女性に餌を貰ったことがありました。
その女性は頻繁にアビに餌を運んでくれてアビはこの人になら飼われてもいいかもと思ったこともありました。
しかしその女性はやがて来なくなりました。
飼われてもいないのにアビは捨てられた気分になって、それからアビは人に飼われることを期待しないようにしました。
だからきっとユキの飼い主も来ないだろうと思いました。
でもにこにこと笑顔で語るユキにアビは「来るといいですね」としか言えませんでした。
悲しませたくない、そんな気持ちは初めてでアビはそのとき初めてユキのことが好きだとわかりまりした。





ある日アビに発情期が来ました。
それは突然で、アビはその相手にユキを選びました。
ユキは必死に抵抗しました。オスながら経験がないわけではありませんでしたがでもそれがアビだったのがユキはどうしても嫌でした。
アビのことがふわふわとあったかくてきっと順番をつけるなら雲七の次に好きだったユキはそんなアビにこんなことはされたくありませんでした。
しかしアビは体も力も強く家猫暮らしが長かったユキでは歯も爪も立ちませんでした。
あっちこっち噛まれたり引っかかれたりしながらアビの尖ったものに貫かれながらユキは何度も何度も雲七を呼びました。
まだ雲七に飼われていた頃外に遊びに行ってたまたま会った乱暴な猫に襲われ、すっかり夜中になってから家に帰る途中に悲しくて寂しくて同じように呼んだとき、雲七がすぐに駆けつけてくれたことを急に思い出したからです。
あったかい腕に抱き上げられて安心して泣いた日を思い出して、だから声が枯れるまで何度も何度もくもしち、くもしちと呼び続けました。
散々呼び続けて、それでもアビは止まらなくて、傷の痛みに涙が止まらなくて、それでもただ呼びて続けていたそんな中で…ユキはふと、気付きました。

雲七は、来ない…と。

何故そう思ったのかわからなくてユキはこれ以上ないくらいに頭を混乱させました。
ずっとずっとそればかりを信じていたはずなのに何故そんなことを思ったのかがわかりませんでした。
こんなに待っているのに、こんなに呼んでいるのに何故来てくれないの、そう思ったことなど幾度となくあったはずなのに、それでも信じられたのに。
ただ辛くて悲しくてなおなおと声を上げながらこんなに痛いのは体の痛みだと必死に思い込みました。
この心の痛みを自覚してしまったら本当に雲七が来てくれなくなる気がして、必死に必死にそう思い込むようにしました。





アビがふと正気に戻ったときユキは人間の手で病院に運ばれるところでした。
ユキの体は小さく、アビの爪や歯はとても鋭く、それは仕方のないことでした。
人間の腕の中から微かに聞こえるユキの傷だらけの弱々しい声にアビは深く深く後悔しました。
あちこちに残るユキとユキの血の匂いに胸が押しつぶされそうなほど悲しくなりました。
ユキがようやく帰ってきたときアビは酷いことをしてしまったことを必死に謝りました。
謝って許してもらえるはずもないと思いながらも誤ることしか出来なくて必死に謝りました。
そんなアビにユキはにっこり笑っていいんだよ、と言いました。
発情期はユキにもあるものですしその時は自分だって何がなんだかわからなくなることに病院で気付いたからです。
だからアビを責める気は全然なく、そしてその頭にあったのは全然別のことでした。

雲七が来ないのならこっちから会いにいこう。

きっと雲七は外に出られなくて、それでユキの所に来れないのだとユキは考えました。
だったら会いに行けばいい、今度は自分が雲七の呼ぶ声に答える番なんだと。
その日からユキはよく庭に出ては外に行ける道を探しました。
保護した猫が再び野良にならないようにそこはしっかりと塀に囲まれていましたがユキはそれでも探しました。
その必死さにアビはユキが飼い主に会いに行こうとしていることにすぐに気付きました。
ぼんやりとした記憶の中で飼い主の名前を呼んでいたユキを思い出して少し胸が痛くなりながらアビはユキを手伝いました。
猫の秘密の道なら野良が長かった自分の方がきっと見つけられると思ったからです。
アビの助けがユキは嬉しくてありがとうの気持ちを込めて顔を舐めるとアビもざりざりと舐め返してくれました。
アビと仲良くするのはなんだか久々な気がしてユキはなんだかとても嬉しくなりながら、そしてアビはそんなユキを見てユキのために何でもしてやりたい気持ちになりながら、一緒に道を探しました。
そうして2匹はようやく外に出る道を見つけあとはいつここを出て行くか、それだけになりました。
ユキは暖かくなってからがいいと思いました。
寒いと外に出たくないユキは暖かくならないと雲七も外に出たがらないのだと思っていました。
だから暖かくなるまではここにいよう、そうユキは決めました。





そうして暖かくなるのを待っていたある日、アビはユキに言いました。
「飼い主を探しに行くときは俺もついて行きます」と。
ユキがびっくりしながら「でもアビは雲七を知らないじゃないか」と言うとアビは「あなたとずっといるから大丈夫です」と答えました。
「俺はその人を知らない、けどあなたと一緒ならそれらしい人がいたらすぐに知らせます。2匹ならもっと広くあっちこっち見渡せますしそれに俺は野良だったから秘密の道もいっぱい知ってます。餌だって獲りにいきますし寒いときは寄り添ってあなたを暖めることも出来ます。だから俺も一緒に連れて行ってください」
アビの言葉にユキは泣きそうになりました。
くもしちがいなくなってから本当はずっとずっと1匹(ひとり)でいるのがとても嫌だったから。
嬉しくて嬉しくて尻尾をアビに絡ませながら擦り寄って「ありがとう」と言いました。
猫にとっての最大級の親愛表現にアビも嬉しくてユキの体に尻尾を絡ませました。
その日2匹は寄り添い丸くなって寝ました。
アビはユキと一緒に街を行く夢を見ました。
それがとてもとても幸せで、アビはユキに「ずっと一緒にいます」と告げました。
ユキの返事がどうだったのかアビにはわかりませんでしたがその笑顔は覚えていました。





次の日の朝、アビが起きるとユキがいなくなっていました。
人間たちもユキがいないと騒いでいてそれでアビはユキが自分でどこかに行ったのだとわかりました。
そして呆然とユキの残り香にふらふらと誘われるように庭に出ようとして人間に止められました。
野良猫がいっぱいうろついていると殺される、そうアビも知っていました。
だけどそれでもユキが出ていってしまったのかと思うと心配で心配でたまりませんでした。
歳こそ上でもユキの頭は子供で、飼い主をずっとずっと待ってるほど一途で、そんなユキが好きで好きでたまらないから心配でたまりませんでした。
置いていかれた悲しさよりもユキを心配する気持ちでいっぱいで、部屋の中からアビは何度も何度もユキを呼びました。
何日も何日もそれを続けて、ユキが帰ってこないことを知ったアビはせめて飼い主に会えていることを願いました。
そう願いながらユキに好きだと伝えられなかったことを思い出してアビは一人部屋の隅で泣きました。





それからのアビはユキを探しに外へ向かおうとはしませんでした。
その代わり庭でユキの匂いが来ないかと待っている姿は以前のユキの姿にそっくりだったかもしれません。
でもアビはユキと違って大人だったのでそこから出て行くことは考えませんでした。
いつか、いつか帰って来たその時にアビがいなければきっとユキが悲しむだろうと思ったからです。
もしかしたら飼い主に会ってしまったら自分のことを忘れてしまうかもしれない、そう思った日もあったけど「一緒に連れて行ってください」と言ったあの時ユキは嬉しそうに笑ってくれたから…きっといつか会いに来てくれると信じていました。
だからアビは待ちました。戻ってきたその時には好きだったことを伝えようと思いながら、ずっと、ずっと。





ユキは雲七を探す旅に出ました。
ただ一人の友達も置いて旅に出ました。
ユキはその友達が、アビが大切だったから置いていきました。
巻き込みたくなかった、そんな言い方も出来ます。
ただユキはアビがとても大切だったから、大好きだったから置いていかないといけないと思ったのです。
きっと外に出てしまったら頭の中がくもしちでいっぱいになってしまってアビを大切に出来ない気がしたから、そんな風にアビを1匹(ひとり)にしたくないから、その辛さはよくわかっているから…ユキの思いを言葉にしたならばそうだったでしょう。
そしてユキは決めていました。

いつか、いつかくもしちといっしょに帰ってくる…

ユキはくもしちが大好きだからきっとすぐ見つけられると信じていました。
だからほんの少しの間だから待ってて、と…その思いは匂いと一緒に風に乗せて届けるには遠すぎるのでしょうが、でもアビにはちゃんと届いているとユキは思いました。
早く会いたい、くもしちにも、アビにも。
ユキは思いの導くまま走り出しました。





あるところにユキ、と云う名の猫がいました。
そして、今その猫がどこにいるのかは誰も知りません。
ただ一匹の猫はずっとずっと待ち続けていました。
何の匂いも運んでこない風にきっと元気でいるのだと感じて、また会える日を待ち続けるのでした。